昨年7月に相続法が約40年ぶりに改正されました。
本格的な施行は2019年7月1日ですが、これに先だって、自筆証書遺言の方式が緩和されました。
この部分は2019年1月13日に施行されています(施行日より前に作った自筆証書遺言には新しい方式が適用されません。)。
従来、自筆証書遺言(つまり自分で書く遺言)は、全文、自筆で書く必要がありました。
自筆ですから、いわゆる手書きです。
ワープロやパソコンで作ることは許されません。パソコンで作ったり、他人に代筆を頼むと、たちまち無効になってしまいます。
高齢の方が懸命に手書きする姿は、みるに忍びないものがあります。とくに財産が多岐にわたる場合、自筆はあまりに不便でした。
そこで今回の改正では、一部、パソコンで作ることが許されました。
但し、「一部」だけであって、全部ではありません。
全文をパソコンで作ることまで許されたわけではありません。
パソコンで作れるのは、遺言の本文に添付する財産目録だけです。
遺言の本文は自分で手書きしないといけません。
遺言の本文に添付するものですから、パソコンで作った財産目録は、本文とは別の用紙に印刷する必要があります。
遺言の本文に、パソコンで作った財産目録をホッチキスで留めたりして添付する(くっつける)ことになります。
パソコンで作った財産目録を添付できるようになったので、今後は、弁護士が作った財産目録を遺言に添付することができます。
ですが、添付した財産目録には遺言者本人の自署と捺印が必要です。
財産目録が複数枚にわたるときは、すべてのページに自署捺印が必要です。裏表に印刷したときは裏表両方に自署捺印が必要となります。
預金通帳のコピーや登記簿謄本などを遺言に添付することもできますが、この場合もすべてのページに自署捺印が必要です。裏表に渡るときは裏表に自署捺印が必要になります。
財産目録を訂正したときは、遺言の本文と同様、遺言者が訂正の場所を指示して、変更したことを付記してこれに自署し、かつ変更した場所にも捺印しなければなりません。
このように、今回の改正によって、自筆証書遺言の作成が少し楽になりました。
ですが、遺言が要式行為であることに変わりはありません。
つまり、遺言は法律で定められた方式をきちんと守っていないと、無効になってしまいます。
自分ではちょっとした間違いであっても、決められた要式に従わないと、たちまち無効になってしまいます。
せっかく作っても、無効になったのでは意味がありません。
本人が作ったものかどうか、つまり自書かどうか、筆跡が後で争われることもあります。
内容によっては、遺留分減殺請求の原因となり、遺言者が意図した結果にならないこともあります。
やはりひとりで作るには不安がつきまといます。
要式に誤りがないよう、また無用な紛争をできるだけ避けるためにも、専門家が内容をチェックする必要があるといえます。
そろそろ遺言が必要かも、と思ったら、まずはご相談ください。
専門家がお手伝いすることで、自筆証書遺言も安心して作ることができます。