アメリカ企業の間で、従業員らの多様性を確保するための施策を縮小する動きが相次いでいる。
アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)は、アメリカ社会における過去の人種差別の結果を清算するために、積極的にマイノリティを優遇する措置である。アファーマティブ・アクションは1960年代から続く取り組みであるが、1970年代には「逆差別」であるという批判が広がり、1978年の「カリフォルニア大学評議員会対バッキ事件」の合衆国最高裁判決を機に多様性を実現するための取り組みとして継続が認められた。
アファーマティブ・アクションの法的・制度的な論争の焦点が差別の是正から多様性の実現へと移行していく中で、多様性マネジメントやDEI(Diversity,Equity,and Inclision)が21世紀の新たな支配的価値を獲得していったが、「逆差別」との批判はなくならなかった。そんな中、2003年6月、合衆国最高裁判所はハーバード大学とノースカロライナ大学において実施されていた人種を考慮する入学者選抜の方法について違憲とする判決を下した。以降、アメリカでは反DEI活動が拡大しており、トランプ大統領の就任でその流れが加速している。
社会における根強い差別を前に、法、裁判、そして弁護士である我々に何ができるか。アメリカの苦悩をヒントに考える。