弁護士 古田昌己BLOG

弁護士法人 菜の花

日弁連シンポジウム「終活支援のための条例」に参加してきました

5月29日,日弁連会館にて開催された「第11回法化社会における条例づくり シンポジウム『終活支援のための条例』」に参加してきました。

このシンポジウムは,私が所属する日弁連法律サービス展開本部自治体等連携センター・条例部会の委員が主体となって企画したものです。

 

今後,単身高齢社会化が進んでいく中で,これまでであれば家族・親族が担ってきた故人の葬儀や納骨など死後事務について,その担い手がなく亡くなっていくということが多くなっていくと考えられます。これは,死亡する際に一人である孤独死とは異なり,死亡後も自身の宗教・宗派による葬儀が行われない,遺骨の引き取り手がいないなどという形で孤立するという問題です。

シンポジウムでは,高崎経済大学の八木橋教授が「『終活』支援にかかる地方公共団体の役割と責任」というテーマでご講演され,その後,全国に先駆けて終活へのサポートをかかげた条例を制定した神奈川県大和市や,経済的に困窮する独居高齢者のエンディング・サポート事業を行ってきた神奈川県横須賀市の担当者の方の報告がありました。

印象的だったのは,福祉は生前に死期周辺(死後課題)の相談に応じてこなかった(相談窓口がない)という現状があったということです。そして,その要因は,墓地埋葬法の規定にあるということです。これは,墓地埋葬法9条が,埋葬・火葬を行う者がいない・判明しない死体は死亡地の市町村長がこれを行わなければならないと規定しており,身元不明の死体がある状況ではその義務(死後の焼却義務)を負う一方で,生前の死期周辺については規定がないということからそのようになっているということでした。横須賀市では,このような現状に疑問を持った担当者がエンディング・サポート事業を運用し始めました。対象者の尊厳を守りたいという熱意が伝わってきました。

また,講演,報告を担当された方々を交えたパネルディスカッションもあり,地方自治体による終活支援の現状や課題について学ぶことができました。

 

このシンポジウムについては,少し先ではありますが,日弁連のホームページ等に掲載されると思いますので,ご関心のある方はご覧ください。

 

また,偶然にも講師のお一人が鳥取県出身の方だったということもあり,シンポジウム後の懇親会ではなぜか鳥取の話題が多く出ました。

東京において人口最少県の話題で盛り上がるということも含め,とても有益なシンポジウムとなりました。