弁護士 古田昌己BLOG

弁護士法人 菜の花

刑事事件の故意について

今回初めて法律問題について書いてみたいと思います。

刑事事件において弁護人として弁護活動をする場合,弁護人の視点から事件を分類するポイントのひとつとして被疑者(被告人)が被疑事実(一般的には「容疑」と言われたりします。)を①認めているか(自白事件),②争っているか(否認事件)があります。

そして,否認事件といっても何を争っているかで更に事件を分類できますが,今回は「故意」を争う場合についてお話したいと思います。

犯罪の成立要件としては,ⅰ構成要件に該当すること,ⅱ違法性が認められること,ⅲ有責性が認められることが一般的に挙げられます。これらの要件1つ1つについて議論は尽きませんが,故意を争う場合はこのうちのⅲの段階における犯罪成立要件を争うことになります(考え方によってはⅰの段階に分類されることもありますが,深く立ち入りません。)。

犯罪を犯したとして逮捕(勾留)されたり,裁判になったとき,被疑者(被告人)が,客観的に問題となっている行為を行ったこと自体は争わないが,それを意図的にはやっていない,あるいはそのようなことをやった記憶がないなどと主張することがあります。

刑事事件においては,立証責任は検察側にあります。ですので,弁護人としては故意が存在しないということを積極的に証明する必要は本来ありません(もっとも,実際は何らかの形で弁護人も故意の不存在を基礎づけるための努力することが多いと思います。)。検察側が故意の存在も立証する必要があるのです。

私は,被疑者段階で故意を争っている場合(もっとも,この場合,被疑者自身は「故意」を争っているということを明確に認識していることは少ないと思います。),接見(面会)する際に,まずは,とにかく捜査機関側のストーリーに乗っかることがないよう,自分の認識とは異なる供述を絶対にしないようアドバイスし,日々励ますようにしています。

不思議なことに,本当に故意を争っている場合でも,長期間取調べを受けていると自白してしまうというケースが数多くあると聞きます。私も弁護人として活動していて,「早く出られるんだったらやった認識がなくても認めた方がいいんじゃないか。」などと質問を受けることがあります。

自白する場合の心理状況については書籍などで様々な考察がなされていますが,いろんな理由や要因でやってもいないことや身に覚えのないことを認めることになるとのことです。

無辜の処罰がされることは絶対に避けなければなりません。

私の経験上,被疑者段階で故意を争い不起訴となった事例では,不起訴になるべくしてなったケースが大半です。

弁護士としては,不起訴になるべき案件を不当に起訴されることがないように尽力することが大切だと思っています。

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